2010
こんにちは。管理人のうさこです。
いつも「黒」にお越しいただきまして有難う御座います。
皆様に大切なお知らせが御座います。
先月(6月)下旬ごろ、私の愛用PCが壊れてしまい、
データがすべて吹っ飛んでしまいました。
こちらのほうはバックアップがありますので問題ないのですが
HP編集用に使っていたビルダーさんもなくなってしまい、
ソフト自体手元にないものですから、現状、更新ができなくなっております。
そこで、苦肉の策ではありますが、
完全復活する日まで、ブログの追記にて
小話を載せていきたいと思います。
なにぶん、表のページは変わりませんので、分かりづらいかと思いますが、
ブログはちょこちょこ更新してまいりますので
時々見に来てやってください。
追記にて小話 「視線」を載せます。
裏で連載していた「アイシテル」の補完話です。
年齢制限はありません。どうぞお楽しみください。
ではでは。
「視線」
<アイシテル/補完話>
「ナルト先輩、まぁた来てますよ、例の彼v」
「・・・・・ふえ・・?」
1つ年下の後輩が、肘でツンツンとナルトの腕をつつく。
カウンターを綺麗にテーブルダスターで磨いていたナルトは、
突然の戯れに、きょとんと目を丸くして振り返った。
(あ・・・ホントだ。このところ、いつもだな・・・。)
ナルトと後輩の視線の先には、上等な墨を垂らしたような黒髪が美しい、酷く顔の良い男がいる。
彼はナルトたちの視線に気づいたのか、読んでいた冊子から顔を上げ、にこり、と笑みを作った。
「――ああもうカッコいい! いいなあ、ナルト先輩はぁ・・。 超イケメン彼氏もいるくせに!」
「・・・へっ? どーいう意味だってば??」
彼女の言わんとしている意図に気づけないナルトは、眉を八の字にして小首をかしげる。
いつまでも年不相応な仕草が愛くるしくて、後輩の子は、小さくため息をついた。
「あの人、ナルト先輩のシフトの時にしか来ないんです! やっぱり気づいてなかったんですね・・。」
やれやれ、と肩を竦められても、ナルトには意味が良くわからない。
そんなの偶然じゃないの、と笑って過ごそうとしたのに、後輩は首を大きく横に振った。
「付き合うつもりがないなら、はっきり言ったほうが良いですよ! ナルト先輩は愛想が良いから。」
「へ?」
「自分には彼がいるって、ちゃんと伝えないと、あの人、ずーっとナルト先輩のこと追いかけますよ?」
「何それ。一時期騒いでたストーカーってやつ? あはは・・、そんなのオレには無縁だってばよ!」
だってストーカーされるのって、大抵美人さんだろ?とナルトは楽天的だ。
そういえば、この類まれなる美少女は、己の容姿に無頓着な上に無自覚だった。
思わず後輩は、額に指を当てた。
このカフェは決まって、火曜、木曜、土日の昼間と夕方、異様に男性客が増える。
目的はひとつ。愛らしいナルトを見に来るのだ。
だが、店主が目を光らせているため、大っぴらに口説くことはできない。
バイト終わりの出待ちも、ナルトの恋人がほぼ毎回迎えに来るので、チャンスがないのだ。
だから、彼らは見つめるしかない。
愛くるしい笑顔を浮かべ、店内で働くナルトの姿を。
そしてあの美しい男もまた、ナルトの輝きに導かれた一人なのだろう。
太陽と同じ色の髪、
空を映し込んだ瞳、
薔薇を侍らせた唇、
健康的で肌理細やかな肌。
浮かべる喜怒哀楽の移り変わりは目まぐるしく、見ていて飽きない。
顔もいい、性格もいい、容姿も素晴らしい。
ただ、頭だけはそうもいかなかった。
「もう。知りませんからね、あの人にストーカーされても!」
「なに怒ってんだってばよ。オレなんかにストーカーする物好きなんていねえってば。」
ケラケラと軽い笑い声を立てて、ナルトは仕事の続きをする。
今は休憩時間ではない。
さっさと仕事を終わらせて、お昼の休憩に入りたいのだ。
(・・・今日オレ何食べよっかな。んーと・・・。)
「・・あの、すみません。」
「あっ、はぁい・・・!」
件の黒髪の青年に呼ばれ、彼の傍による。
どうやら紅茶のおかわりのようだが、葉を変えたいらしい。
どれがお勧めですか、と彼がメニューを広げた先を見ながら、
ナルトは右側のページ、ランチメニューを見ながら今日の昼飯を思っていた。
「・・・・・ねえ、聞いてる?」
「・・・・へっ? あ、あ、・・す、すみません! 何、ですかってば?」
オムライスか、カルボナーラか迷っていたナルトは、突然話しかけられて酷く驚いた。
慌てて青年を見やると、彼は、ナルトがぼんやりしていたのが面白かったのか、くすくすと笑い声を上げた。
「・・ずいぶん、熱心に見てるなぁと思ったら、もしかして、お昼ご飯考えてたの?」
「うっ・・・も、申し訳ありませんってば・・・。」
青年にはしっかりバレている。
なんで、と思うよりも早く、「キミの考えは読めやすいから」と言葉を返され、
あまりに恥ずかしくて、耳まで赤くなってしまった。
「いいよ。どれがいい?」
「・・・はい?」
「お昼ごはんの話。・・・何でも頼んで良いよ。ボクの伝票につけておいて。」
「えっ・・・・!?」
この青年は、どこまで本気なのだろう。
確かに、昼食は店のものを頼むつもりだったが・・・。
なぜ、自腹で昼食を取らねばならないことを知っているのだろう。
「遠慮しないでいいよ。最近、節約してるんでしょ?」
「うん、まぁ・・・、そうですけど・・・。なんで、そんなこと・・・知って・・・・。」
青年は答えない。
ただ、いっそ鮮やかなまでに美しい微笑を湛えたままだ。
本来、笑顔というのは、胸のうちを温かくしてくれるもののはずなのに、
なぜだかナルトは、酷く美しいその微笑みに、鉛を飲み込んだような感覚に陥った。
(・・・なんか、不思議な人だなぁ・・・・)
「――ねえ、ナルト。何にする? ここのオムライス、好きなんでしょ?」
「あ、うん。・・じゃぁ・・・オムライス・・・。」
「分かった。ちゃんとつけておいてね。」
墨色の瞳が瞬き、慈愛を秘める。
なぜだろう、その揺らめきは、まるでこれから起こる何かを予言するかのように・・・。
(あれ、名前教えたっけ? ここのオムライスが好きなことも、節約してることも・・・、いつ話したっけ?)
「どうしたの、ナルト?」
青年は、微笑を湛える。
甘く揺らめくその視線は、ぽつぽつと降り始める疑念は、
貼り付けたような、薄っぺらい笑顔は・・・、
いつまでも、いつまでも、絡み付いて、離れなかった。
fin
05 | 2025/06 | 07 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
29 | 30 |
サイナルコも大好物です。
携帯版<ぷち黒>も宜しくですv